高血圧の方は、日本で4300万人であり、15〜64歳人口の2人に1人以上は高血圧ということになります。当院にも高血圧で通院されている方、健康診断で高血圧を指摘されて来院される方が多くおられます。
当院では管理栄養士による栄養指導、栄養相談を毎週木曜日午前中に行なっています。管理栄養士に、高血圧の方が気をつけるべき生活習慣について、以下にまとめてもらいました。
また、当院では「高血圧の話」という冊子をお配りしていますのでご希望の方はお申し付けください(以下からダウンロードもできます:https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf)。
血圧とは…?
心臓からの血液が全身に流れるときの血管の壁に与える圧力のことを言います。この血圧は心臓が送り出す血液の量や、血液を流す血管の通りづらさなどの要因で決まります。
高血圧とは(基準値と降圧目標)
高血圧は、血圧の値のうち上の血圧(収縮期血圧)が140 mmHg以上の場合、または下の血圧(拡張期血圧)が90 mmHg以上の場合に診断されます。また、家庭血圧の値が135/85 mmHg以上である場合も高血圧と診断され、高血圧の判定では家庭血圧の値の方が優先されます。血圧を下げる目標値は以下のとおりです。
高血圧
診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧 135/85 mmHg 以上
降圧目標値
75歳未満:診察室血圧130/80mmHg未満(家庭血圧125/75未満)
75歳以上:診察室血圧140/90mmHg未満(家庭血圧135/85未満)
血管の壁は本来弾力があり血液の流れによって伸び縮みします。しかし血圧が高くなると常に血管が張りつめた状態になり、段々硬く厚くなっていきます(これを動脈硬化といいます)。これによりさらに血圧が上がり、動脈硬化を悪化させるという悪循環におちいります。動脈硬化が進行すると、脳卒中や心臓病をはじめとする様々な合併症につながってしまいます。
高血圧の原因
日本人の高血圧の約8〜9割が原因を一つに定めることのできない本態性(ほんたいせい)高血圧で、遺伝的な体質や塩分の過剰摂取、肥満など様々な原因が組み合わさって起こります。中でも塩分の過剰摂取が主な原因です。
食事療法
○減塩
塩味は食事をより一層おいしくするための欠かせないポイントです。
適度に塩分を摂取することは大切ですが、摂りすぎには注意が必要です。
様々な調味料の他に、麺類やパン類・肉魚の加工品にも塩分は含まれています。
含まれる塩分が少なくても毎日摂取すると塵が積もり塩分過多となってしまいます。
減塩の工夫をしたり、塩分の入っていない食材に置き換えてみるのも、とても良いことです。
例))
パン→米
お漬物→お浸しやサラダ
◎麵の汁は飲まないように
◎ソースや醤油を使うときはかけずに小皿にとる
◎出汁やコンソメを使う
◎生姜やゆず、お酢など香りのよいものを使う
こういった工夫をし、塩分が1日6g未満になるように気をつけましょう。
○野菜や果物をたくさん食べる
野菜や根菜類、果物にはカリウムという成分が多く含まれています。
カリウムは塩分の主成分であるナトリウムと反対に働くため、高血圧を改善するには良い成分とされています。
カリウムは水に溶けやすい成分のため、茹でると減ってしまいます。そのため生のままサラダで食べたり、電子レンジで加熱したり、茹で汁ごと食べる味噌汁などに野菜を入れると効率よく摂取できます。
果物もたくさん食べ過ぎると糖分の過剰摂取に繋がるため、適量を心がけましょう。
腎臓が悪い方はカリウムを摂取すると腎臓に負担がかかるので控えましょう。
○低脂肪を心がける
肉やチーズなどの乳製品、またスナック菓子やインスタント食品には悪玉コレステロールを多くする働きがあり、動脈硬化を引き起こしやすくなります。
しかし魚や植物性の油脂は動脈硬化を予防する働きがあるので、バランスよく摂取することが大切です。
○アルコールは適度に
アルコールの適量摂取はストレスの解消にもなりますが、飲みすぎには注意です。
また、一緒に食べるおつまみには塩分の高いものがたくさんあり、結果的に血圧を上げてしまいます。
以下の量を参考に楽しくお酒が飲めると良いですね。
適量の例(男性1日分)
日本酒:1合まで ビール:500mlまで 焼酎:0.5合まで ウイスキー:水割シングル2杯まで
※女性はこの半分が適量
○適正体重を維持しましょう
適正体重は体格指数(Body Mass Index, 略してBMI)で判断します。BMIは次の式から計算します。
BMI=体重 (kg) ÷[身長 (m)×身長 (m)]
BMIは18.0~25.0未満が適正範囲とされています。
BMIは22くらいが適正なので、目標体重は次の式から計算します。
目標体重 (kg) = [身長 (m)×身長 (m)]×22
BMI 25以上の場合は「肥満」と判定します。
肥満は高血圧だけでなく、糖尿病や心疾患など様々な病気を引き起こす原因になります。
肥満のある方は、体重をBMI 25未満にすることが目標となります。
自分の適正体重を把握して維持しましょう。
運動療法
1日30分程度の有酸素運動をすると良いです。
ウォーキングの他にも水泳やストレッチなど、血流の良くなる運動をすることで血圧も落ち着いていきます。
まずは自分ができることから、少しずつ取り組むことが大切です。
無理のない範囲で継続していきましょう。